森林資源を持続的に利用する林業は、森林環境保全の観点から重要であるだけでなく、地域経済・社会の基盤でもあります。また、我が国の人工林が本格的な利用段階を迎える中、森林資源の一層の活用促進を図り、林業を国際競争力ある新たな成長産業にすることが期待されています。
このような要請に応えるためには、素材生産の生産性の向上、低コスト化を実現し、収益構造を改善することが必要です。また、林業の担い手確保の観点からは、作業安全性の向上、労働負荷の軽減を実現し、林業をより魅力ある職業にすることが求められます。これらの課題に対応するには、地域の森林環境・作業条件に適した合理的な作業システムの構築が重要であり、そのために必要な機能・性能を有する林業機械の開発・導入が求められています。
「先進的林業機械緊急実証・普及事業」では、林業事業体と機械メーカー等の協力により、林業現場の要請に合わせて開発・改良された先進的な林業機械が導入されました。また、それらを活用した新たな作業システムの実証・評価を行い、地域の森林環境に適合した作業システムを構築しようとする取組みが進められています。
「先進的林業機械緊急実証・普及事業」では、林業事業体と機械メーカー等の協力により、新たに開発・改良された先進的な林業機械の導入、地域の森林環境に適合した作業システム構築に向けた実証・評価の取組みが進められています。
地域の作業環境に適した作業システムの確立に向けて、新たに開発・改良された先進的な林業機械を林業の現場に導入します。新規に開発された林業機械や、海外で定評があるものの我が国への導入にあたり改良等が必要な林業機械が導入されています。
林業機械の稼働率を高めるためには、保守体制の構築が重要です。メーカーによる対応はもちろん、簡易な修理等は地元業者でも対応できるよう協力体制を構築しておくことが必要です。また、自社のオペレータにて日々の機械のメンテナンスや故障時の簡易な診断ができることも重要です。本事業では、地元業者や自社オペレータ対象の研修等を行い、機械の保守体制を構築します。
導入した林業機械を安全かつ効率的に使いこなすことができるよう、オペレータ育成のための研修・訓練等を行います。メーカー提供による研修の機会はユーザーとメーカーの対話の場となり、今後の機械開発・改良に有益な知見が発見される場となることが期待されています。
導入した林業機械を実験的に使用・評価するだけでなく、実際の素材生産事業の規模でも使用し、その導入効果を検証します。地域のさまざまな作業環境で評価を重ねることで、効率的な作業システムの確立や、今後の林業機械開発に有益な知見を集積することを目指しています。
実際の林業現場で林業機械の実演等を行い、その機能・効果を紹介する「現地検討会」の開催等を通じて、本事業の成果を広く全国に普及します。多くの林業関係者に対して先進的林業機械に関する情報提供の機会をつくることで、林業の機械化を通じた生産性・労働安全性の向上を推進します。
「先進的林業機械緊急実証・普及事業」では、各モデル事業の実施主体となる林業事業体(森林組合、素材生産事業者等)の取組みを支援する地域の体制として、「運営委員会」を設置しています。「運営委員会」は、実施主体となる林業事業体に加え、地元行政、林業機械メーカー・代理店、試験研究機関等が参画しています。
「運営委員会」では、導入する林業機械に求められる機能や性能、新たな作業システム開発に向けた評価・検証、機械の保守運用に必要な連携の形成など、本事業の推進に関して多角的に協議を行っています。モデル事業の実施主体および地域の多様な関係者が参画して協議する場を設けることで、先進的林業機械の導入・改良や運用にあたって関係者が連携・協力できるようにし、本事業の成果をより高めることを狙いとしています。
また、林業機械の導入や作業システムの開発には、オペレータの習熟による作業効率の変化や様々な作業環境における動作検証など、長期的な視点での取組みが必要です。「運営委員会」の場で形成された人的ネットワークが基礎となり、本事業の終了後もモデル事業の実施主体を支える体制として継続的に機能することが期待されています。
「先進的林業機械緊急実証・普及事業」では、新規に開発・改良された先進的な林業機械を林業の現場に導入し、事業規模での実証・評価を行います。林業機械メーカーとユーザー(林業事業体)が協力して実証・評価に取組むことで、地域の実情に即した林業機械・作業システムを開発することを狙いとしています。
本事業で得られた成果を元に、林業機械の一層の改良を進めるとともに、効率的な作業システムの確立を図り、先進的林業機械の普及を推進します。また、本事業で得られた知見、開発ニーズを林業機械メーカーにフィードバックすることで、将来の林業機械開発に役立てられることが期待されています。