食品業界に課せられているリスクとチャンス
原発による放射能汚染や、病原菌に汚染された生肉の食中毒事件など、「食」の安全性に対する消費者の関心は高まりを見せています。その反動により、消費者の危機感から生じる風評被害も深刻化しており、食品企業は、製品の安全性やその証明にいっそうの努力を迫られています。
食中毒事を実際に起こしてしまった場合の経営的な影響も甚大です。これまでの事例からみると、国内・海外を問わず、事故を起こした企業は高い確率で倒産しています。
一方、貿易自由化の進展を受け、海外からのより安い食材の流通が国内の生産や製造を圧迫することが懸念されています。
しかし、このような状況は、かえって「攻め」に転じるチャンスであるともいえます。衛生管理の徹底した商品のニーズは高まる一方であるとするならば、それに確実に対応していくことが、この変化する市場で確実に勝ち抜いていくための武器と言えるでしょう。
「予防措置」を徹底する合理的な衛生管理手法=HACCP
では、安全な食品を提供するために、どういった工夫が必要でしょうか。
全ての製品に対し、検査をして安全なものだけ出荷する、というわけにはいきません。
衛生管理手法の国際標準である、HACCPの考え方は、食中毒のリスク要因を徹底的に排除し、予防措置をとる、というものです。
日本では、導入の経緯から、難しい、お金がかかるもの、というイメージがついてまわっています。
しかし、本来HACCPは自主的な衛生管理の手法であり、町の小さなお店でだってできるものなのです。
今では、水産物の国際市場、特に、EUおよび米国においては、HACCP手法による衛生管理が義務付けられています。米国では、食品安全強化法の施行により、2012年7月からは国内に流通する全ての食品に対し、HACCPが義務化されることになっています。
HACCPによる衛生管理がグローバルスタンダードとなっている今、日本の水産業も、それとは無縁ではいられないはずです。